バイリンガルにする方法を間違えないで

仙台市にある英語の幼稚園「明泉学園プリミアスクール」にて撮影。壁に飾ってあるのは幼児の作品。プリミアスクールは「英語で学ぶ幼稚園」。英語「で」がポイント。明泉学園には、英語環境がある幼稚園と、日本語環境で英語学習の時間もある幼稚園の二つがある。

 

日英バイリンガルに育つ環境

子どもを日英バイリンガルに育てたい場合は、まず「子どもが育つ環境」について考えてほしいと思います。そこに「英語」はありますか?そして「日本語」はありますか?当然ながら日英バイリンガルになるには両方の環境がなければなりません。

しかし、英語は大人になってからでも習得できますし、幼児期に急いで英語を習得させなきゃいけないというものでもありませんね。幼児期はあくまでも自然な言葉のある中で子どもらしく楽しく遊びながらゆっくり習得していくものです。多くの親たちもそう望んでいることでしょう。国際カップルでしたら、母語が日本語の父親が「日本語」のみを使い、母語が英語の母親が「英語」のみで話しかけるという風に役割を決めて実践することが多いようです。こうして子どもは話す相手によって言語を使い分けるようになります。

プリスクールで過ごすと

最近、英語で保育をするプリスクールが人気ですね。通い始めると3カ月~6カ月で英語を使い始めます。1年経つ頃には3歳の幼児でも英語を使ってコミュニケーションが取れるようになります。ここで注意したいのは言葉の育ちです。特に気になるのはセミリンガルの問題です。

一つ例を挙げておきしょう。日本の小学校でも外国籍の子どもたちが多くなり、言葉の問題も顕著になってきました。例えば、ブラジルから親に連れられて日本にやってきた子どもたちが日本の公立小学校へ通学して日本語で教育を受けます。母語はポルトガル語で両親の話す言葉もポルトガル語です。彼らは市や学校内に設置された日本語教室で日本語を学びますが、自分の気持ちを母語でも日本語でもうまく表現できなくて、そのもどかしさから、イライラしたり、物にあたったり、友だちとトラブルになることも多いようです。このような子どもの行動を教師をしている友人は「これは、バイリンガル障害だよ」と言っていました。些細なことでもキレてしまう行動は言葉の問題だけではないでしょうが、原因の一つとして考えられています。

セミリンガルやバイリンガル障害にならない方法

幼稚園を英語だけの「プリスクール」に行くと、英語は話せるけど日本語のレベルは一般の幼児と比べると低いです。私は卒園後は日本の学校へ行く選択がよいと思います。これがセミリンガルにならない方法です。普通の幼稚園に行く子どもたちと比べると、プリスクールへ行く子どもたちは日本語が十分育ちません。しかし、その後に日本の小学校へ行けば「母語」の日本語で学習しますから日本語能力は心配ありません。言葉で問題になるのは、プリスクールに行って、その後もインターナショナルスクールへ進学する場合です。インターナショナルスクールでは英語で学習が進められますから、日本語を学ぶ時間がほとんどありません。言葉の育ちの心配があるときは、一般の日本の小学校に進んで英語を忘れないように放課後に週数回英語を学ぶ機会を作ったり、インターナショナルスクールではなく「バイリンガルスクール」と呼ばれている小学校を選んだりするとよいでしょう。最近では日英バイリンガルスクールとして新しい取り組みをしている小学校も現れています。

セミリンガルとは・・日本語も英語(外国語)も中途半端に育ってしまって、どちらの言語も母語レベルまでいっていない状態のこと。セミリンガル状態が長く続いてしまうと深く考えることが難しいといわれている。また、一つの言語を「教育言語」として育つと結果的に他の言語もうまく操れるようになるという説もある。

明泉学園には小学校がない

冒頭の写真の明泉学園のプリミアスクールについてお話しましょう。私は2006年に設立された当時から明泉学園への訪問をくり返していますが、10年以上経った今も明泉学園には小学校がありません。卒園した子どもたちのほとんどが仙台市内の小学校に進みます。2年間のプリミアスクールを卒園した子どもたちは、放課後、同園のフレンドクラブに週に3回通い「英語環境で」時間を過ごしています。身に付けた英語力の維持と更なるブラッシュアップのためです。子どもたちは日本の小学校で学んでいますから、母語の日本語で学習をしており、セミリンガルになる心配はなく、驚くことに、どの子も英語がネイティブレベルまで育っています。私は幼児期にプリスクールに行く場合は、このような学びの形がよいと思います。

明泉学園の読み聞かせコーナー。カーペットに子どもたちが座ってお話を聞く。

選択は自由ですが・・費用もそれなりにかかる

幼児期をどんな幼稚園で過ごすかは親の選択の自由ですが、プリスクールを選んだ場合は、就学後の「母語での学習の機会を失わないこと」「英語力の維持を考慮すること」の二つに注意しましょう。最近では、プリスクールは大人気になっているようですが、卒園して英語に触れないと忘れてしまいます。そのため、プリスクール側も英語教室や英語学童などの英語教育サービスを提供しています。そして、英語力維持にはそれなりに費用もかかります。

今回、「英語力」の育ちだけを見て記事をまとめました。子どもが伸び伸び育つ様子を見ながら、その隣に英語をそっと寄せておきたいですね。

参考文献

岡本夏木「幼児期ー子どもは世界をどうつかむかー」2019.岩波書店.東京

明泉学園 プリミアスクール

ABOUTこの記事をかいた人

清水 万里子

児童英語講師歴34年。教育学修士(岐阜大学)。(株)エデュシーズ代表取締役。Representative of Calgary Board of Education, Canada。2001年より、その道のプロがガイドする総合情報サイトのオールアバウト「子供の英語教育」オフィシャルガイド。現在、保育園、小学校、大学で非常勤講師。中日新聞「中日こどもウイークリー」英語学習面執筆、学校訪問記事を担当。岐阜県可児市「小学校英語コミュニケーション事業」アドバイザー。著書に「子供のための英語(金星堂)」「はじめての親子英会話(アスク出版)」「はじめての親子英会話あそび編(アスク出版)」がある。その他、共著多数。2018年ベトナムにて翻訳著書発売。All About 「子供の英語教育」オフィシャルサイトはこちら